「何ら偽証はなかった」


 都議会自民党を代表して、豊洲市場移転問題に関する調査特別委員会のこれまでの審議について意見開陳を行います。
 小池知事が豊洲移転を延期し、豊洲市場への移転に関する都民の関心が高まる中、豊洲市場移転問題特別委員会、いわゆる市特が設置され、その審議の経過の中で、豊洲の東京ガス跡地に市場を移転することに決まった経緯、その間の東京ガスと東京都の交渉の経緯などについて事実関係を明らかにするため、強力な調査権限を有する本百条委員会が設置をされました。
 本委員会は、事実関係を調査するため、これまで五日間にわたり、延べ二十四人の証人、時間にして二十三時間に及ぶ証人喚問を行ってきました。
 各証人におかれましては、それぞれ古い記憶を思い出していただきながら、誠実な証言を行っていただいたことと、この場をおかりして、改めて感謝の意を表するところであります。
 最初に、三月十一日には、東京都の元副知事、元市場長、そして東京ガスの現会長と社長及び役員OBの方々、総勢十一名の方々から、東京都が豊洲の東京ガス跡地を築地市場の移転先に決定した経緯や、東京ガスが自社所有の土地を市場用地として東京都に売却することに協力するに至った経緯を確認いたしました。
 そして、例えば、護岸対策工事費を東京ガスが負担しないこととなったのは、計画変更による結果にすぎず、東京都が東京ガスから豊洲を市場用地として入手するに際して、東京ガス側に対して何かしらの不正不当な利益が供与されたということはなかったということが我々の質問で確認されました。
 三月十八日には、市場の四人の元市場長の方々と、豊洲市場の土地購入時の東京都財産価格審議会の会長など四名の方から、土壌汚染対策に関する確認書、費用負担に関する合意、建屋の下に盛り土を行わなかった経緯、契約案件の審議状況などについて質問させていただきました。
 その中で、東京ガスの七十八億円、土壌汚染対策費の負担については、法的に何ら責任がないのにもかかわらず、企業の社会的責任として、追加の負担をしていただいたものであることが確認されました。
 三月十九日には、豊洲市場の移転交渉を、東京ガスと行った濱渦元副知事には、当時、交渉が行き詰まった中、どのように両者の調整を前に進めていったのか確認しました。
 そして、あたかも裏取引があったかのようにいわれていた水面下での交渉とは、いわゆる密約といった類いのものではなく、売買交渉に当たって事務的に具体的な細部を詰めていくということを表現した言葉にすぎなかったものであったということも確認がされました。
 翌二十日には、石原慎太郎元知事に対して、なぜ築地から豊洲に移転すると判断したのかについて直接確認をいたしました。
 そして、四月四日には、それまでの証言を踏まえ、豊洲市場移転に関与した当時の知事本局長、政策報道室理事、担当部長の三名から、石原知事、濱渦副知事のもとで、実際にどのような事務手続が進められたのか確認をいたしました。
 この中で、いわゆる二者間合意といわれる、あたかも密約があったかのようにレッテルを張られた平成十三年七月の東京都と東京ガスの部長級間での確認書も、それまでの担当レベルで協議した内容を確認したものにすぎなかったことがわかりました。
 また、東京ガスから提出された資料にありましたXデーという表現も、この委員会で一部の委員から、勘違い、的外れな指摘がされており、週刊誌等もいわくありげに報道されておりましたが、実際は、Xデーとは東京ガスがみずから汚染対策を定め、公表することをそう呼んだだけのことで、実は、何ら問題のない事柄であったこともはっきりといたしました。
 また、土壌汚染対策に関する費用負担についても、法令基準を満たす土壌汚染対策と、卸売市場用地という特別の条件を勘案したさらなる土壌汚染対策、それぞれについて東京ガスと東京都双方が了解のもと、取り決めがきちんと行われたことも明確になりました。
 さらに、多岐にわたる交渉が互いの了解のもとで円滑に進むように、東京ガスと東京都双方の部長級職員が交わした覚書に関しても、あたかも不正があったかのような質疑もありましたが、東京ガスと東京都双方の当事者の証言からは、そうした事実につながる発言を見出すことはできませんでした。
 つまり、証人喚問の結果、豊洲への移転を決めるに当たって、東京都と東京ガスが交渉を進める過程や、東京ガス、東京都双方における当時の検討作業において、その正当性を疑う事実は何ら発見できなかったということです。
 しかしながら、ガバナンスの問題、情報公開、横の連絡、縦の連絡など、今後の都政運営に反省として生かさなければならない点は多数あるということも指摘しておきます。
 なお、今回の当委員会全般にわたる証人喚問について、一言申し上げておきます。
 喚問は、証人から事実を聞くためのものであり、質問者が想定したシナリオのもとに、シナリオに都合のいい言質を引き出すためのものではありません。
 ところが、我が党以外の質問者の中には、みずからの想定したシナリオに固執した質問に終始するとともに、時には、提出された資料の一部を曲解し、何の裏づけもないまま、証人喚問の場を使って、みずからが創作した、事実と異なるストーリーをアピールするといった質問者までいました。
 事実関係を調査する際、最も肝心なことは、予断を持たず、公正、中立の立場で、提出された資料を読み、証言を聞くという謙虚な姿勢であります。この基本中の基本が本委員会の審議においておろそかにされた委員がいたことは、非常に残念に思います。
 さて、百条委員会は、調査が厳正に行われるよう、証人喚問において偽証の証言を行ったと認められた場合には、告発しなければならないとされております。延べ二十四人の証人の方々は、宣誓の上、当時の記憶を思い起こし、非常に誠実に証言をされていました。
 しかしながら、現在、当委員会が行った証人喚問の証人のうち、特定の証人に対し、偽証の陳述を理由に偽証の認定をすべきであるとの主張が、我が自民党を除く、ほかの会派から提出されております。
 そして、虚偽の陳述に当たると考えられる案件一覧には、各会派が偽証の陳述、つまり偽証に当たると考えられる陳述とその根拠と考える資料が記載され、当委員会に提出されておりますが、我々は理解に苦しんでおります。
 虚偽の陳述とは、事実と異なるとの認識を持ちながら、あえて違うことを証言することです。要するに、故意にうそをつくということだと思います。つまり、時間の経過などによって忘れてしまった、勘違いのため結果的に事実と異なる証言をした場合は、虚偽の陳述とはならないのです。
 ある証言を虚偽の陳述であるとして告発するためには、これが客観的事実と相違する証言であるというだけでは足りず、事実とわかっているのに、故意に、記憶に反して、事実に反する発言をしたという点まで証拠によって立証する必要があります。
 したがって、虚偽の陳述を主張する会派の中には、メモなどに矛盾する記載があることを重視しているようですが、こうしたメモの存在だけでは偽証告発の根拠としては甚だ不十分といわざるを得ません。
 例えば今回、濱渦証人がかかわったのが平成十三年七月の基本合意までであり、それから先は全く知らないとか、一切相談もあずかっていないなどと証言をされております。
 この証言に対し、それ以後にも、濱渦証人に都の担当者が報告をしたかのような資料が存在することをもって、濱渦証人が、自分の記憶に反して、あえて事実と異なる証言をしたのだということの証明にはならないです。
 そもそも基本合意締結後において、濱渦証人に報告した可能性を示す資料もわずか数点しか存在せず、当時、日々多くの業務に追われていた証人が、十年以上前のことについて、例えば、覚書の締結といった大きなトピックスとかであれば覚えていたとしても、日々の細かい報告事項についてまで、正確に事実を記憶していなくとも、これはやむを得ないと考えざるを得ません。
 また、当委員会において行われた今回の証人尋問においては、例えば、贈収賄などのような、ほかの刑事事件に発展しそうな内容や、東京ガスに対して不当な便宜供与を図ったというような内容は皆無であり、各証人があえてうそをつかなければならない必然性が全く見当たりません。つまり、偽証の陳述をしなければならない動機そのものがありません。
 このように、故意の発言であると、根拠も薄弱なまま、また、偽証する動機すら見つからない中で、あえて偽証認定をすることは到底容認できませんし、パフォーマンスといわざるを得ません。
 私は法律の専門家ではありませんので、弁護士の方からもご意見を伺う必要があると判断し、我が党の顧問弁護士の方に、虚偽の陳述に当たると考えられる案件一覧に記載されている資料を検証していただきました。
 その結果、百条委員会に提出された証拠書類関係で、偽証の事実を証言したと認定することは困難であり、ましてや、告発をしたとしても、これをもって検察が起訴に持ち込むことは大変難しいといわざるを得ないとのご見解でありました。そして、議会局の顧問弁護士の方からも、ほぼ同様の見解が示されております。
 つまり、法律の専門家の方々が、今回の証人喚問の議事録、資料等を検討したところ、偽証の認定は困難で、偽証告発は困難であるということが、共通した見解と示されております。
 本委員会の目的は厳正な調査であり、偽証告発は厳正な調査を担保するための手段にすぎません。偽証告発は偽証罪による刑事処分を前提とするものですから、都議会が都民の代表として告発する以上は、十分な根拠と法的な裏づけが必要不可欠です。
 都議会として証人を告発して、証人を刑事被疑者の立場に追いやるということの重大さは、ここであえて指摘することでもないと思います。
 我々都議会議員は、与えられた権限が大きければ大きいほど、その誤った運用は、時には関係する方々の基本的人権を損なうおそれすらあることを忘れてはなりません。決して政治的思惑や単なる思い込みによって権限を恣意的に運用し、証人の方々の基本的人権を侵害するおそれのあることを行ってはならない。
 我が党はこれまで、こうした信念のもと、委員会の審議、そして証人喚問に挑んでまいりました。
 しかし現在、我が党を除く、公明、共産、都民ファースト、東京改革、生活者ネットの各会派は、我が党から見ても、また法律の専門家から見ても、非常に曖昧かつ薄弱な理由で、数に物をいわせ、偽証認定を行おうとしております。
 偽証認定を主張する各会派は、都議会として告発するにもかかわらず、結果として証人が不起訴処分になったとき、その責めをどのようにとられるつもりなのか。その点についての覚悟を十分に認識されているのかお聞きしたい。
 百条委員会を立ち上げ、何も出なかったから格好がつかなかったという思いがあるのかもしれませんが、都民の代表である都議会が、告発するという重みを十分に認識し、確実な証拠に基づいて告発するべきであり、立証が見込まれないような告発は厳に慎むべきであります。
 今回の偽証認定と告発に向けた動きは、あたかも偽証告発をもって本委員会の成果と位置づけ、百条委員会を設置したことに一定の評価を与えようとするための告発、まさに、ためにする告発ではないかと疑念すら覚えます。
 現在、本委員会では、偽証の認定と告発に向けた取りまとめがなされようとしておりますが、刑事告発を前提とした偽証認定を行うという以上、法的な検討を踏まえた慎重な対応が必要です。
 そして何よりも、二十四人に及ぶ証人の方々の真摯な証言を率直に受けとめ、法律家の方々のご指摘を謙虚に受けとめ、当委員会の調査に真摯に応じていただいた証人の方々の人権を不当に侵害しないよう、都議会議員として責任ある行動をとるべきです。
 そこで、都議会自民党は、当委員会がまとめた虚偽の陳述に当たると考えられる案件一覧を検討した結果、偽証認定される事実は発見できなかったことを本委員会において決定すべきことを主張し、意見開陳を終わります。

議事録の所在:平成29年豊洲市場移転問題に関する調査特別委員会 本文 2017-05-24

 


「なるほどQ&A」

Q:今のままの築地ではだめなの?
A:昭和10年の開場から80年以上が経過している築地市場は、施設の老朽化が進み、安全性に多くの不安を抱えていますが、事業者の皆さんの「マンパワー」によって品質と衛生が保たれています。
しかし、このままでは、築地市場が都民の食生活を支える役割が果たせなくなる恐れがあるほか、施設の耐震性も懸念されることから、一刻も早く、抜本的な対策を進める必要があります。
Q:なぜ豊洲地区が移転先に選ばれたの?
A:築地市場の現在地整備が頓挫した後、業界要望等をもとにした、移転整備を行う条件は以下のようなものでした。

  1. 約40haの広いまとまった敷地
  2. 高速道路や幹線道路へのアクセス
  3. 築地の商圏に近く顧客との関係などを継承できること

これら全ての条件を満たす移転先として豊洲地区が選ばれました。

Q:地下水に有害物質が検出されたのは大丈夫?
地下水の環境基準は、その水を70年間、毎日2リットル飲み続けても人体に影響がないことを基準にしています。
そもそも豊洲市場で地下水を使用することはありません。
地上と地下は厚さ35~55㎝のコンクリートなどで遮断され、土壌も地下水も人に触れることはありません。
地下ピット床面にガス侵入遮断の防護策を行うと共に、地下ピットの換気強化と地下水管理システムの機能強化を進め、更なる安全を確保します。
Q:豊洲移転延期で例えばどんな影響が出るの?
A:五輪・パラリンピック招致決定後の都政は、政策の時間軸をすべて2020年に合わせてきました。
築地市場内を通り、五輪・パラリンピック選手村と国立競技場を結ぶ環状二号線建設は、その象徴ともいえるものです。
2020年東京大会の成功は国際公約。それに向けて努力し作ってきた都政の時間軸が、今や根底から覆ろうとしています。
豊洲なら五輪選手への食の提供の国際基準もOKです。